心不全療養指導士勉強ノート_第17回

第17回目は、甲状腺と循環器疾患の関係についてです

甲状腺機能異常は、主に動悸、息切れ、不整脈(心房細動、洞性頻脈や徐脈)、高血圧、高コレステロール血症、高トリグリセライド血症および浮腫などの症状で循環器内科を受診します。

★甲状腺機能亢進症にみられる症状
◇暑がりである
◇脈拍数が多く動悸がする
◇体重減少
◇手足が震える
◇汗が異常に多い
◇イライラする
◇かゆみがある
◇口が渇く
◇不眠
◇微熱が続く
◇息切れがする
◇排便の回数が増える
◇眼球が出てくる

『弾性軟』の甲状腺腫になっています。
前脛骨粘液水腫を認めることがあり、下肢前面から足背部にかけて限局性に盛り上がりをみとめます。
他にも甲状腺ばち指もあります。

★甲状腺機能低下症にみられる症状
◇寒がりである
◇脈拍数が少ない
◇むくむ(顔・全身)
◇体重が増える
◇気力がない
◇皮膚が乾燥する
◇声が枯れる…聴覚器官に浮腫(ムコ多糖の沈着が原因)
◇眠気を感じる
◇物忘れしやすい/記憶力低下
◇動作がにぶい
◇便秘
◇筋力が低下する

『弾性硬』の甲状腺腫です。
全身の皮膚は乾燥し、冷たく粗雑になります。ぱさぱさした頭髪、薄い眉毛(外側1/3脱落)など粘液水腫様顔貌が特徴です。

★両方に共通してみられる症状
◇だるさを感じる
◇疲れやすい
◇髪の毛が抜ける
◇甲状腺が腫れる
頭髪の脱毛は機能亢進症では、新陳代謝が亢進し次が生えてくる前に抜けてきてしまい、機能低下症では、次がなかなか生えてこなくて古く固くなった髪の毛がまばらに抜けます。

甲状腺疾患が他の病気とかかわりがあることが重要です
心房細動/心不全/徐脈/心嚢液貯留/高血圧
●肝機能異常/消化器症状
●高血糖/高コレステロール血症
●四肢麻痺/認知機能障害/うつ病
●不妊症/月経異常
が起こるので気を付けて観察しましょう!

論文紹介

甲状腺機能と循環器疾患リスクについての論文を紹介します。甲状腺機能は低下および亢進のいずれでも心血管イベントリスクが高くなります。

甲状腺機能の影響は、特に若年の世代で大きく、例えば、甲状腺機能亢進症のバセドウ病では、高血圧、心房細動や心不全の発症に注意が必要です。一方で、高齢者の甲状腺機能低下症に甲状腺ホルモン補充を行うと心拍数上昇から心不全の発症に注意が必要です。

健康診断で、高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症、中性脂肪)や心電図異常を指摘されたときは、甲状腺の評価について循環器内科内分泌内科へご相談ください。

(参考文献)The optimal healthy ranges of thyroid function defined by the risk of cardiovascular disease and mortality: systematic review and individual participant data meta-analysis. Lancet Diabetes Endocrinol. 2023 Oct;11(10):743-754.

大濠内科  歯科医師  井上 麻乃

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