Vit.D投与でCABG術後の心房細動リスク低下
ビタミンD欠乏は、冠動脈バイパス手術(CABG, coronary artery bypass grafting)後の術後心房細動(PoAF, Postoperative atrial fibrillation)のリスクであることが知られています。448例のRCTの併合解析の結果、ビタミンDが低下していたCABG例への予防的ビタミンDサプリの投与により、ICU滞在期間中の術後AF発症が低下していました。
術後AF発症率は、ビタミンDサプリ群33%、プラセボ群58%であり、RRは0.60 [95%CI 0.40-0.90]でした。
ICUにおいて術後のAF発症は、ICU滞在期間延長だけでなく、致死率、脳卒中、心不全、認知症、慢性心房細動の罹患率を有意に上昇させます。CABG術前にビタミンDを補充することは術後AFを減らす可能性があるということです(1)。
ビタミンD欠乏と心房細動新規発症に関する報告は多く、その機序として、ビタミンD欠乏自体が直接的に心房筋の変性を引き起こすこと、心血管作動物質の調整障害に関わることが挙げられています。図のようにRAAS(renin–angiotensin–aldosterone system)は心房細動、高血圧や心不全の発症に関わります。ビタミンDは、特にこのRAASに対して阻害作用を有していることが心房細動新規発症のリスク低下に貢献しているようです(2)。
(1) Effect of vitamin D on postoperative atrial fibrillation in patients who underwent coronary artery bypass grafting. J Cardiol. 2023 May 24;S0914-5087(23)00113-2.
(2) The Possible Influence of Vitamin D Levels on the Development of Atrial Fibrillation. Nutrients 2023, 15(12), 2725
大濠内科