心不全療養指導士勉強ノート_糖尿病治療薬
13回目は、糖尿病治療薬についてです
治療薬には、インスリン抵抗性改善薬、インスリン分泌促進薬、糖吸収・排泄調節系治療薬があります。
高血糖状態が続くとインスリンの働きが悪くなったり(インスリン抵抗性上昇)、インスリンの分泌量が少なくなります(インスリン分泌量減少)。
インスリン抵抗性改善系には、ビグアナイド薬・チアゾリジン薬があります。
ビグアナイド薬には、メトホルミンが昔から使われていて第一選択薬になっています。肝臓での糖新生を抑制し、インスリン感受性を改善させます。副作用には、乳酸アシドーシスがあるので注意します。
チアゾリジン薬は、ピオグリダゾンがあり、副作用として、肝機能障害、心不全、体重増加があります。
インスリン分泌促進系には、DPP4阻害薬、SU薬、インスリン促進・分泌薬があります。
DPP4阻害薬には、DPP4の働きを抑えることでインクレチンの働きを増やします。一般名が~プチンという種類になります。
SU薬は、服用後短時間で強力なインスリン分泌刺激作用があり、使用しすぎるとインスリンが枯渇してしまいます。~iドがつく種類の薬になります。
糖吸収・排泄調節系にはαグルコシダーゼ阻害薬・SGLT2阻害薬はあります。
αグルコシダーゼ阻害薬は、糖質は小腸でα‐グルコシダーゼという酵素によってブドウ糖に分解、血液中に送られインスリンの働きによって各組織でエネルギーとして利用されます。
糖質の分解を抑えるので、消化・吸収を遅らせ食後高血糖になりにくくします。
SGLT2阻害薬は、腎臓での糖の再吸収を阻害するので、尿と一緒に糖の排泄もします。~フロジンとつく種類になっています。心臓と腎臓の保護作用があるので心不全にはファンタスティックフォーの1つとして使われます。
注射薬には、GIP/GLP-1受容体作動薬やGLP-1受容体作動薬があります。両方とも食欲が減退するのが特徴です。
GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチドは、2023年に販売され、HbA1cと体重が著しく減少します。
論文紹介
糖尿病をタイプ別に5つのクラスターに分類し、合併症や併存症に合わせて薬物治療の選択をすることが大切であり、その治療方針をまとめた論文を紹介します。その内訳は、
クラスター1 自己免疫性糖尿病(SAID) :抗GAD抗体(膵臓のβ細胞に対する自己抗体)陽性
クラスター2 インスリン欠乏糖尿病(SIDD) :インスリン分泌障害、やせ型が多い
クラスター3 インスリン抵抗性糖尿病(SIRD) : 肥満および重度インスリン抵抗性
クラスター4 肥満関連糖尿病(MOD) : 肥満、軽度インスリン抵抗性、比較的若年
クラスター5 加齢関連糖尿病(MARD) : 高齢者、加齢に伴う
の5つです。
糖尿病治療薬の選択の際には、病態と心血管イベント抑制効果を考慮した治療方針が大切です。
(参照文献)Novel strategies for glycaemic control and preventing diabetic complications applying the clustering-based classification of adult-onset diabetes mellitus: A perspective. Diabetes Res Clin Pract. 2021 Oct:180:109067.
大濠内科 歯科医師 井上 麻乃