心不全療養指導士 勉強ノート_脳梗塞の種類
第10回目は、脳梗塞の種類と塞栓源検索についてです
脳梗塞には下記の種類があります。日本循環器学会不整脈薬物治療ガイドライン2020(1)
◆ラクナ梗塞
脳の深部に出来る比較的小さな脳梗塞で1.5cm以下の大きさのものです。
脳の太い動脈から出たとても細い動脈(=穿通枝 0.2~0.3mm程度度)が閉塞することにより発症します。
◆アテローム血栓性脳梗塞
脳内の比較的太い動脈や頚動脈の動脈硬化が進行し、血栓を形成してつまらせたり、血栓が血管の壁からはがれて流れていき脳内の深部の血管をつまらせてしまうことにより発症します。
◆心原性脳梗塞
心臓で作られた血栓が脳へ塞栓として運ばれて発症します。心房細動によるものが最多です。
◆大動脈原性脳梗塞
大動脈の粥状動脈硬化病変などによって、血栓の一部が塞栓性機序で脳血管に到達して発症します。
◆奇異性脳梗塞
奇異性とは、心臓に穴が開いていたり、肺の動静脈奇形を持つ人で、足などの静脈にできた血栓が動脈系に流れ込み、脳血管に詰まる病気です。成人の奇異性脳塞栓では、卵円孔開存症(PFO)が最も多いです。深部静脈血栓症の検査として下肢静脈エコーやDダイマーの測定を行います。
論文紹介
脳梗塞のリスク評価のために行う頸動脈エコーの有用性についての論文を紹介します。
日本超音波医学会の頸動脈エコーガイドライン2017では、頸動脈プラークの性状として、石灰化、低輝度、潰瘍、出血によりプラーク破綻の危険度を評価することが推奨されています(2)。例えば、頸動脈プラーク内出血を認める場合、脳卒中HR2.42倍、冠動脈疾患HR1.95倍とそれぞれ心血管リスク上昇と相関を認めました(3)。
脳梗塞の予防のためには、個々の心血管リスクに応じた血圧と脂質の管理が大切です。
他に、脳梗塞のリスク評価・原因検索として、当院で行っている検査を紹介します。心房細動などの不整脈を探すための24時間心電図(ホルター心電図)、奇異性脳梗塞の要因となる器質的心疾患の有無を調べる心エコー、深部静脈血栓を調べる下肢静脈エコー、血栓性素因(プロテインC、S、アンチトロンビンIII)の検索など脳梗塞や心筋梗塞など血栓による疾患の予防のための検査を行っています。
(参照文献)
(1)日本循環器学会 / 日本不整脈心電学会合同ガイドライン 2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン p40
(2)超音波による頸動脈病変の標準的評価法 頸動脈超音波診断ガイドライン2017 日本超音波医学会
(3)Atherosclerotic Carotid Plaque Composition and Incident Stroke and Coronary Events. J Am Coll Cardiol. 2021 Mar 23;77(11):1426-1435.
大濠内科 歯科医師 井上 麻乃