心不全療養指導士勉強ノート_睡眠時無呼吸症候群

:桜:第11回目は、睡眠時無呼吸症候群についてです:ピカピカ:

心血管疾患における睡眠時無呼吸症候群の合併頻度

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と高血圧はたがいに合併率が高く、OSA は高血圧の成因となります(1)。
また、OSA はもっとも頻度が高い二次性高血圧の原因であり、治療抵抗性高血圧を含むコントロール不良高血圧の原因疾患です。OSAが 2型糖尿病を発症させる機序としては、夜間の間欠的低酸素血症や睡眠分断化による交感神経活動亢進が、視床下部 ―下垂体 ― 副腎系(hypothalamic-pituitaryadrenal: HPA axis)機能を亢進させ、糖代謝異常インスリン抵抗性を惹起すると考えられています。
CPAPはAHI 低下効果に優れるものの、アドヒアランスは マウスピースのほうが優れており、24時間平均血圧の低下度は 2群で差がないと報告されています(2)。
睡眠中に上気道の閉塞により繰り返される低酸素血症中途覚醒は、夜間および日中の交感神経活性を亢進させ、血圧上昇、心拍数増加をきたします。
さらには、気道閉塞時の努力性呼吸により胸腔内には過剰な陰圧が生じ、それが一晩中呼吸イベントのたびに繰り返されています。そのため左心室には高い 心室の壁内外圧差がかかり、後負荷が増大し、左室肥大をきたし、左室機能に悪影響を及ぼします。その結果、心筋への酸素供給と需要のバランスが崩れ、心筋虚血、心筋収縮障害、不整脈のリスクが高まるというわけです。このように様々な心疾患、糖尿病、高尿酸血症などは睡眠時無呼吸症候群が関与しています。             

論文紹介

世界の睡眠時無呼吸症候群の推計有病者数についてのLancet Respiratory Medicine誌の論文を紹介します。睡眠時無呼吸症候群は、世界中で広く認識されており、30-69歳(日本)における有病率は、AHI≧5(軽症)が32.7%、AHI≧15(中等症)が14.0%と推計されています(3)。

AHI≧5AHI≧15
米国5400万人2400万人
ドイツ2600万人1400万人
日本2200万人900万人
ブラジル4900万人2500万人
フランス2400万人1200万人
中国1億6700万人6600万人

         

高血圧症、糖尿病、不整脈および心筋梗塞、心不全、脳卒中など心血管疾患と睡眠時無呼吸症候群の合併についてのガイドラインと論文を紹介しました。睡眠時無呼吸症候群の合併がないか睡眠ポリグラフィ検査を行い、調べることができます。

(参照文献)
(1) 2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン 日本循環器学会
(2) CPAP vs Mandibular Advancement Devices and Blood Pressure in Patients With Obstructive Sleep Apnea: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA. 2015;314(21):2280-2293.
(3) Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis. Lancet Respir Med. 2019 Aug; 7(8): 687–698.

大濠内科  歯科医師  井上 麻乃
                             

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