健康ハートの日_歯周病と心血管疾患の関係

8月10日は健康ハートの日です:イエローハート:

健康ハートになるためには、口腔内の状態も良好な必要があります。歯周病の原因は歯垢(=プラーク)という細菌の塊です。
歯垢は、黄白色の粘着物で、時間とともに量が多くなり、下の方では酸素がいらない嫌気性菌が増え、歯石になって硬くなってしまいます。
嫌気性菌が歯肉に侵入しようとし、身体は菌をやっつけて侵入を抑えようとして、歯肉からの出血・発赤・腫脹などの炎症の症状がでます。出血した状態が続くと歯垢は歯周ポケットの中に潜り込み、どんどんと歯周組織を破壊していき炎症を繰り返していきます。歯周病が起こるということは、口の中で常に炎症が続いているということです。歯周ポケットが5㎜以上が28本あるとすると、手のひらいっぱいに潰瘍があるのと同じなので、大きな傷を作っている状態なのです。

炎症によって出てくる毒性物質(TNF-α)が歯肉の血管から全身に入り、様々な病気を引き起こしたり悪化させる原因となります。炎症性物質は、インスリンの働きを悪くさせたり、肥満、血管の動脈硬化に関与しています。上の図のように歯周病と全身疾患は相互に作用して悪化するサイクルになっています。
歯周病の予防・治療を行うことで、全身の様々な病気のリスクを下げることが可能です。
日々の歯磨き・口腔ケアを行い、全身の健康につなげることが重要になっています:歯::歯ブラシ:

論文紹介

歯周病と心房細動における心房筋の変性に関する論文を紹介します。

外科的に切除された心房細動患者の左心耳の線維化の程度を評価した結果、歯肉出血、歯周ポケットの深さ(≧4mm)およびPISA(*)と有意な相関があったと報告されました。

*Periodontal Inflamed Surface Area (PISA):歯周ポケットの臨床的アタッチメントレベル、歯肉退縮量とプロービング時の出血の値から歯周ポケット炎症面積を計算する方法

歯周病による感染及び炎症が、心房の線維化を介して心房細動の発症を引き起こす可能性が示されています。心房細動の管理において口腔ケアも重要と考えられます。

【参考文献】
Periodontitis exacerbates atherosclerosis through Fusobacterium nucleatum-promoted hepatic glycolysis and lipogenesis. Cardiovascular Research, 2023, Jul 6;119(8):1706-1717.
Relationship Between Periodontitis and Atrial Fibrosis in Atrial Fibrillation: Histological Evaluation of Left Atrial Appendages. JACC Clin Electrophysiol. 2023 Jan;9(1):43-53.
診断と治療 歯周病が及ぼす全身疾患への影響
日本臨床歯周病学会

大濠内科 歯科医師 井上 麻乃

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